前回は音の吸音、拡散について話をしましたが、今回はそれらを踏まえたルームチューニンングについて、まずは壁の話からしていこうと思います。ご自分での宅録に役立てて頂ければと思います。
固い材質の平面同士は音を反射させてしまう
壁は通常であれば壁の面同士が平行になる場合が多いと思います。ので前回の図でもお話した通り、そこには音の反射が生まれ、結果的に「ライブな環境」になってしまします。壁の材の材質が固いものであればそれは特に強い物となります。例えばあまり一般的な住宅では無いケースかもしれませんが極端な話
の様なコンクリートむき出し壁の場合で、この壁の反対側の壁もこの壁と完全に平行していてかつ同じ材であった場合は、何もしなければ音は反射しまくります。これは壁その物が固い材質のものでかつ、表面も平面が出ているのでその様になります。固い材質なので音を反射させ、表面は平面が出ているので拡散もさせないと言った感じになると思います。
ではもしここに多少の凹凸がある様なデザインの壁紙を貼ったとします。触ればザラザラした感触のもの。例えば
の様な感じのもの。そうすることによって音は多少拡散されます。理由は壁の平行面が、ザラザラ面の凹凸の分だけ厳密には平行面では無くなるからです。平行面が減ることによって音源に対して音の反射に時間差が生じて「拡散」させることになります。
平面を可能な限りなくして音を拡散させる
コンサートホールやレコーディングスタジオなどは、そもそもが音の拡散も考えられた設計になっています。
上の写真の壁を見てみてください。片側の壁しか映ってませんが、映ってない下手側(写真で言う右側)も恐らく同じ形になっている、か同じ形で凸凹面を少しずらした形になってると思います。これは壁と壁の平行面を減らして音を拡散する為にこの様になっているんですね。コンサートホールなどはどこでも必ずこの様に壁と壁の平行面は少なくなる様な、そもそもの部屋の形になっていると思います。よく見る光景だと思いますがこれにはそう言う音響的な意味の理由があります。
では宅録を行う一般住宅でも、もちろんこの様にすればベストなのですが現実的ではありません、これから完全オーダーメイドでプライベートスタジオを作る予定があるとかでも無ければ。ではどうすれば良いかですが、レコーディングスタジオやオーディオルーム用のグラスウールが入った吸音パネルや、拡散パネルを設置すればもちろん良いのですが、更にもっと一般住宅向けの方法があります。
壁にカーテンを掛ければ良いです
それは窓が無い部分もです。そしてそのカーテンは可能な限り厚手の生地のものでかつ、ヒダが多い方が望ましいです。遮光カーテンとかは生地も厚いし良いですね。またその際のカーテンレールを2列の、通常であればレースカーテンも掛ける用のものにして、そこにレースカーテンではなく厚手のカーテンを更に、と言う形で二重にして厚さを稼ぐと言うのもありです。カーテンを掛けることによって壁は凸凹面になり、また柔らかいので吸音効果もあります。二重にした場合は吸音効果も増しますしその2枚の間に空気層も出来ほんの少しですが防音効果も高まります、その程度の防音効果は高域にしか生きませんが無いより静かなはずです。
業務用レコーディングスタジオでもカーテンでの吸音拡散が行われている部分もあります。コントロールルームとブース間にあるガラス窓部分にはカーテンが掛かっているのをよく見ます。スタジオの場合、そもそもがそのガラス窓以外のほとんどの部分が吸音拡散層と言う設計なので、実際レコーディング中そのカーテンを閉めている所はあまり見ませんが(コントロールルーム側に居るディレクターやエンジニアと、ブース側に居るプレーヤーがアイコンタクト取れませんからね。ガラス窓は部屋の一部分なので他の部分で音響特性が考えられている為一部が音を反射させるガラス面でも問題無い、しそれ以前にスタジオのガラス面はそもそもそのガラスに対する壁に対して平行に設置されてなく傾いている場合が多く、それで音を拡散させてるのもあると思いますし)でも、ミックスダウン時はブース側が見えている必要も無い訳ですし、カーテンが閉まっていることもよく見ます(デッドな空間が望ましいのは録り音に関してだけでなく、ミキシング、モニター環境でも同じことです)
宅録で業務用レコーディングスタジオの様な音を録るのには、録り音その物とそれを正確にモニター出来る環境もな無いと近いものにはなりません。機材面もそうですがこういうルームチューニングも必要だと思います。次回は床に関して書いていきたいと思います。