歌録りは、基本的にはデッドな空間で
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最終更新日:2014/11/22
レコーディング, 音楽制作 ボーカルレコーディング, ルームアコースティック
機材面だけでなく、音を録る場所の音響的条件は重要
ボーカルレコーディングをする際、マイクやマイクプリ等、機材面ももちろん重要ですが、同じくらい重要な部屋のルームアコースティック環境。音響環境ですね。楽曲販売、音楽制作コンテンツで楽曲を入手した後ボーカルレコーディングはご自分でやられる方も多いと思います。その様な方の為に良いボーカルレコーディングをして頂く為の、今回もアドバイスをさせて頂きます。
部屋の形状や壁、床、天井の材質で音は変わる
ルームアコースティック環境と言うのは、要はその部屋の響きのことです。例えば極端な例で言えば、
の様な部屋と、
の様な部屋では明らかに響きが違います。想像付く方も普通に多いと思います。上は風呂場、下は寝室ですが、タイトルにも書いたデッドな空間と言うのはこの例で言うと下の寝室の方ってことになります。
この2つの部屋で、同じ強さで自分で手を叩いてみたときの音を想像してみてください。風呂場の方は凄く響く、残響音が残る。一方寝室の方は響かない、残響音がほとんど残らないと思います。デッドな空間とは残響音が残らない空間のことで、手を叩いた音で例えれば風呂場が「ぱーーーーーーーーん」なら寝室は「ぱん」になるはずです。ちなみにデッドな空間とは逆の風呂場の方、残響音が多く残る空間の方は「ライブな空間」と言う言い方をします。
デッドな空間で素材の音を中心に、反響する余計な音は録らない
ではなぜ歌録りにそれが関係あるかと言うことなのですが、素材の音がボヤける、本来の素材の音以外の物まで入ってしまう、と言うことが主な原因ですね。その様な残響音と言うのは、レコーディングの場合(でなくてもPAでもそうですが)基本的には後処理で付け足すもの、リバーブやディレイのエフェクトで付け足すものなんです。
上の画像は当スタジオでも使用しているwavesのプラグインのリバーブの画像ですが、音を取り込む先がDAWでなくPAミキサーだったとしても、
の様なリバーブ、ディレイエフェクトがPAミキサーとセットになっている、もしくはPAミキサーに内蔵されていて、ライブ現場でもPAオペレーターがミキサーに入った後の音に、後で掛けてくれています、普通は。
ではなぜそれを「後付け」で掛けなければならないか、なのですが、残響音と言うのは音の前後感、奥行き感を決める物で、ミキシングの際に他のパートとの兼ね合いや目指すサウンドの方向性次第で前に置いたり後ろに引っ込ませたりと状況によって使い方、ミキシングの仕方が変わってきます。他の音が入ってみないと分からない部分が多いのです。その時にデッドな空間で録られた「ドライな音」(素材の音のみの残響音等一切入っていない物)があれば奥まらせるにしても前に置くにしてもどういう状況にも対応出来る。が、そもそもの録り音がすでに「ウェット音」(残響音が入ってしまっている物)だとそれのコントロールがミキシング時に出来ないと言うことになります。またレコーディングの場合は特に、編集時に問題が出てきます。リバーブ音が残っているがために不自然な切り方になってしまい、その素材を別の場所に貼ったら貼った先の頭の音が不自然になってしまったり、と言うことが出てきてしまったりします。
特別どうしてもこの残響感でなければならないとか、このエフェクターでなければ出せないリバーブ、ディレイの音が必要、と言う場面以外では基本的にはデッドな空間でドライな音を録る様にします。歌録りに関しては後処理で再現し難いそういう場面が出てくることも比較的少ないと思います。
ちゃんとしたレコーディングスタジオであれば当然、そもそもがそういう音が録れる様に部屋の作りがその様に設計されています(リハーサルスタジオの場合は状況が変わってきます。「リハーサル」スタジオなので、ビジュアル確認の為に壁が鏡になっていたりとか、そもそもが音「だけ」のことを考えられて設計されている訳では無いので)でも中々ちゃんとしたレコーディングスタジオへ行き録ると言うことも敷居が高い方も少なくは無いと思います。次回はそう言う方の為に自宅での宅録や、リハーサルスタジオやその他、本来のレコーディングスタジオ以外の所でも工夫次第でそれに近い状態にする、その方法を書いていきたいと思います。
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