マイクプリアンプ
マイクその物の次に重要なマイクプリアンプ
前回はプロのレコーディングで使われているマイクのお話、世間一般のちゃんとした流通レベルの音質で歌録りをする為のマイクの紹介をしましたが、今回はそのマイクを通すマイクプリアンプについてお話していきたいと思います。
レベルの小さい信号を増幅するもの
そもそも「マイクプリアンプとは何ぞや」と言う方の為に最初に説明させて頂きますが、マイクプリアンプとは、マイクで拾った信号を音響機器に入力するのに適したレベルに電気信号レベルを増幅するアンプ(増幅器)の事で、マイクその物と共にそれが無いと音にはなりません。リハーサルスタジオ等でマイクを使う場合、ケーブルをミキサーに刺し最初にゲイン調整をするはずです(フェーダーではなくチャンネル入力からのレベルを決める部分、下の赤丸部分)その部分がまさにマイクプリアンプの部分で、レコーディングだから必要とかそう言う物ではなく、そもそもマイクと言うのはそれ単体では音を出すには電気信号レベルが小さすぎるんですね。
楽器の場合はそもそもがアンプが内蔵されていて(パッシブのギターやベースは少し話が違いますが)高いレベルの信号が流れますが、マイクの場合はそのレベルが小さいんですね。録音(ラインに入れる)の場合も考えは同じで、宅録をやっている方でオーディオインターフェイスに直接マイクを刺している方は少なくないと思いますが、それはそのオーディオインターフェイスにマイクプリアンプが内蔵されていると言う話です。もしその様にされている方は必ずオーディオインターフェイスのゲインを調整しているはずです。そこがマイクプリアンプ、略してマイクプリ(HAとも言います)の部分になります。
オーディオインターフェイスやミキサーに内蔵されたマイクプリアンプは簡易的な物も多い
オーディオインターフェイスやミキサーに内蔵されたマイクプリアンプと言うのは、全てがそうではないですが簡易的な物も多く(上の写真のRMEの物は結構良いですが)単体マイクプリアンプ(それ専用に作られた物)に比べれば音質が良くない物も多いです。世間一般レベルで流通している作品での録音のマイクプリにはやはりちゃんとしたそれ専用機が使われているか、もしくは内蔵の物と言うことであれば下の写真の様なSSLやNEVEの卓に内蔵の物などになってきます。
今回はオリジナル楽曲販売でトラック制作やアレンジ制作、楽曲制作をご依頼して頂いた方で、ボーカル録音はご自分でやられる場合のマイクプリアンプのオススメ機材を紹介していきたいと思います。
Solid State Logic/Alpha Channel
プロ用レコーディングスタジオコンソールのSSL社から発売されている、個人スタジオ、宅録用途向けにSSLのミキシングコンソールから1ch分マイクプリアンプを抜き出した(とされている)マイクプリアンプ。値段からして所詮廉価版と言うイメージはありますが実際はそんなこと無く、太くかつ繊細なSSLの音はちゃんと継がれているモデルです。ADコンバータを純正で内蔵しており、それがまた非常に良いです。オーディオインターフェイスのADコンバータが良くなくても、こちらのADでデジタルにしてしまい、デジタルでオーディオインターフェイスに入れてやれば良いと言う話です。かなりコストパフォーマンス高いモデルだと思います。
AVALON DESIGN/VT-737SP
女性R&B系ボーカルなどでは特に威力を発揮する感じの音で、エッジの感じとか、細かい音の立ち上がりが素晴らしいマイクプリアンプです。R&Bボーカルでは定番中の定番のマイクプリですね。アコースティクギターなんかにも非常にマッチするマイクプリです。メジャーレーベル現場でも非常に良く使われていますが、最近は少し飽きられた感も否定出来ないでしょうか、、、。2000年前後位のR&B系ボーカルによくあるエッジの立った音が好きな方には。
FOCUSRITE/ISA One Digital
こちらはどんな音源でも無難にこなす、オールマイティーなマイクプリアンプです。細かい音の立ち上がりも早く、クセも少なく、非常にコストパフォーマンス高いモデルです。また先程紹介したSSLのマイクプリ同様こちらもADコンバータ内蔵ですが、そのADの音も非常に良いです。Studio-azのレコーディング業務でも使用しています。また当スタジオで手掛けているメジャー作品でも、こちらを使っての録り音は多数世に出ています。
マイクプリに関しては、マイクその物に比べれば機種によっての差は小さいと思います。のでこれから本格的な機材を揃えたいと言う方には先にマイクその物を揃えることをおすすめします。上に出したおすすめマイクプリは、当スタジオ音楽制作コンテンツをご利用の方向けに1chの物に限り紹介しましたが(オリジナル楽曲販売で楽曲を買っても、その使用用途は歌のバックトラックが欲しいと言うことでしょうし、そうなるとほとんどはボーカルレコーディングしかしないと思います。ボーカルレコーディングでは基本1chしか使いません)楽器録りでオンマイクとオフマイクを立てて本格的にやられたい方は将来的に見て2ch以上の物を揃えるのも当然ありです。マイクプリは良い物になると音の立ち上がりが早く、細かい音も逃さず録られると言うか、距離感が出やすいと言うか、どんな音源でもオフマイク気味に録った場合に特に差が顕著に出てくる場合が多いと思います(もちろんオンマイクでも差は歴然です)
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